日本の南からどんどん梅雨がやってきて、関東もいよいよ梅雨入りの季節ですね。昔の人は「梅雨」なんて風流に表現しましたが、これはもう立派な雨季です。天気が悪いと、いまいちテンションが上がらないですが、こんな季節でも、いや、こんな季節こそ、いつもと違う作品を生むチャンスなのです。雨を嫌がらずに、いっそカメラと一緒に雨を楽しんじゃいましょう! 今回は雨をテーマにした作品をお見せしますので、雨の撮影を楽しむヒントにしてみてくださいね。
上の写真で僕が持っているのは、レンズなどのホコリを飛ばすシュポシュポ(ブロアー)ですが、雨の日に使うと水滴も吹き飛ばせるのでオススメです。タオルで拭くと水の跡が残りますが、シュポっと水滴を飛ばせばすぐに撮影が可能になります。ぜひ試してみてね。
梅雨の花といえばアジサイ。昨年の大雨で壊滅的な被害を受けた箱根登山鉄道ですが、現在復旧作業中。全線復旧は7月下旬の予定なので、今年のアジサイと列車を撮れないのは残念ですが、来年の楽しみにしておきましょう。箱根登山鉄道は線路の両側に電柱が立っているので、構図をつくるうえで電柱が邪魔になりがちですが、アジサイをうまくつかって電柱を隠し、すっきりとした構図にしています。鉄道写真ですが、あえてピントはアジサイに。絹のような雨粒が写り、とても梅雨らしい作品になりました。
雨の日は風景が雨に濡れて輝くシーンも狙い目。ここは東京の豊島区にある千登世橋。都心とは思えないほど鬱蒼とした森に包まれて、都電荒川線が走ります。線路のまわりの木々が雨に濡れ、妖しい雰囲気に輝いていました。その雰囲気を強調するため、ホワイトバランスを調整して使って緑色をプラスし、ポジフィルムで撮ったかのような色調に仕上げてみました。構図的には、手前の柵の緑と、奥の森を2段に見せることで、立体感を際立たせています。
写真は俳句の季語のように、梅雨の季節を感じさせる被写体を入れるのがコツ。ここでは梅雨の季語とも言える「傘」をメインに、梅雨の季節感を表現してみました。線路を見下ろせる歩道橋から真下を狙うことで、デザイン的なカーブを描く線路に咲いた"傘の花"というイメージで撮影することができました。
こちらは同じ傘でも、大都会の迫力ある風景。人の往来が多いスクランブル交差点で傘の波の迫力を表現したくて、いちばん人出の多い夜に、望遠レンズで圧縮効果を強調して撮影しました。色とりどりの傘の花を狙おうと思ったのですが、今はほとんどがビニール傘なんですね。なんだか水面をクラゲがドヨ〜んと流れているようなイメージになってしまいましたが、これはこれで迫力ある雨の風景になったと思います。
花輪線の八幡平〜陸中大里では、ナナカマドの先にたまる水滴の一つ一つが、まるで宝石のように輝いていました。暗い状況でしたが線路までかなり距離があったので、感度をISO 3200まで上げて、F16まで絞り込みました。ボケを生かすのは簡単ですが、そのせいで列車が存在感を失ってはいけないので、こまめに絞りを変えて撮影し、ボケ具合を確認しながら絞り値を決定しました。
雨の日に絶景を狙うのは難しいですが、そこには雨でなければ撮れない光景が隠れているものです。何か撮るものはないかとキョロキョロしていて見つけたのが、冷たい雨にじっと耐えているバッタの親子。容赦なく降る雨が、自然の厳しさと美しさ、そして子を守る親の愛をも感じる作品になりました。陸羽東線にて。
こちらはキョロキョロしすぎて、狙いが変態的になった例(笑)。雨の日の柵についた水滴に映り込む武蔵野線を撮影しています。こういう水滴って、思った以上に風に吹かれて左右に動き回るんですね。さらにちょっと風が吹くと落ちてしまうので、三脚も使えず、簡単そうに見えてけっこう苦労しました。マクロレンズだけが見せてくれるワンダーな世界です。でもこれ、電車ってわからないかも(汗)
雨の日は水滴そのものも狙い目。浜松町にある貿易センタービルのシーサイドトップ展望台に風景を撮りに行きましたが、あいにくの雨。そこで風景を撮るのはあきらめ、ビルの窓ガラスについた水滴を主役にしてみました。水滴を目立たせるため、絞り込んでパンフォーカスにして、ホワイトバランスもあえて電球モードにしました。これによりまるで都市全体が水に沈み、街から泡が立ち上っているかのような幻想的なシーンになりました。水滴を邪魔だと思うか、素敵な被写体だと思うかで大きな差がでるのです。
前の写真と同じく、水滴を主役にした作品です。流し撮りをしているのに水滴がブレていないので、合成写真のように見えますが、タネもシカケもございません(笑)。ただレンズに水滴がついたまま流し撮りをしただけです。どんなに風景が流れても、水滴はレンズと一緒に動くので、バッチリ写ります。またレンズについた水滴は、通常ならボケて写りませんが、魚眼レンズで絞りを絞り込むことで、水玉をくっきりと描写してみました。低速シャッターで機関車を流し撮りしているので、列車は流れているのに水滴は止まっている、摩訶不思議な写真になりました。
こちらは雨そのものを主役と考え、雨にピントを合わせ、いすみ鉄道の線路をぼかしています。雨にピントを合わせると言っても、雨が見えるわけではないので、背景のボケ具合を確認しながら適当な位置にピントを置き、あとはそこにいい雨粒が落ちてくるのをひたすら連写して待ちます。
イメージどおりの雨粒にするために、シャッター速度を変えながら撮影し、丸い粒に写るシャッター速度を選びました。シャッター速度だけでなく、雨の勢いによっても変わりますので、どんどんテスト撮影して、好みの写り方を模索することが大切です。以下にシャッター速度による雨粒の写り方の変化をお見せしましょう。
こちらはかなりの大雨の日にシャッター速度を変えて撮影しています。1/6,400秒では雨粒が丸く写っていますが、シャッター速度が遅くなるほど、雨の線が長くなっているのがわかります。どの長さが好ましいかはシチュエーション次第で変わるので、まめにシャッター速度を変えて撮ってみるのが大切と言えるでしょう。
この作品は「いつもの公園」こと、埼玉県越谷市の出羽公園で撮影したもの。フラッシュを空に向かって光らせ、雨粒を写し止めることで、まるで星空のようなロマンチックな表現になりました。貨物列車の奥の明かりが強かったので、小さいながらも列車が目立って、まるで絵本の挿絵のような幻想的なイメージにすることができました。
まずはフラッシュと関係なく適正露出になるようにマニュアル操作で露出を決め、フラッシュもオートではなくマニュアル発光モードにして、明るさを調整しながら発光部を空に向けて光らせます。フラッシュの光量だけでなく、雨の強さによっても写り方は変わるので、とにかくテスト撮影をしましょう。
続いてはホームに叩きつけられた雨の水冠を狙ったもの。走り去っていくテールランプは、イタリアの新幹線「イタロ」です。ミラノ中央駅のホームに寝転んで水冠を狙う僕は完全な不審者ですが、雨の日のホーム先端なんて周りに誰もいないので、ご安心を。こんな写真が撮りたいなと作品を想像すること、それを実現するためなら旅先で服がビチョビチョになってもかまわないと思えるくらいイッちゃってるかどうか(笑)が、大切です。
ブログ「1日1鉄!」のために近所に撮影に出たのはいいけれど、大雨にみまわれ、田んぼの前で途方にくれる僕。じっと眺めていると、田んぼに雨が落ちた瞬間に、宝石のような水玉が浮かぶことに気づきました。かなり強い雨の中の撮影ですが、どこに雨が落ちるかなんてわかるわけがないので、テキトーな位置に置きピンして、あとは列車が来たらひたすらシャッターを押しまくりました。写るかどうかは運任せ!
そしてようやく数本目の列車で撮れたのがこの一枚。水冠が崩れたあとに空中に残された水滴が、とても幻想的に写りました。やはりズボンは泥でグチョグチョになりましたが、素敵な瞬間が撮れて大満足です。雨の日の近所の公園でも、アイディア次第でこんな作品が撮れちゃうものです。ぜひみなさんも替えのズボンを用意して(笑)チャレンジしてみてくださいね。
中井精也からお知らせ
ゆる鉄画廊は新型コロナウイルスの感染拡大抑制のため3月27日から休業しておりましたが、6月6日より営業を再開いたしました!
当面は営業時間を短縮し、平日、土休日ともに13時〜18時の営業とさせていただきます。入口ドアの開放、消毒液の設置、スタッフのマスク着用など感染対策を徹底してまいりますので、ぜひお越しください。
そして営業再開にあわせて、写真展「青春鉄路1 ―中井精也が80年代に記録した珠玉の鉄道風景―」を開催いたします。ステイホーム期間に発掘したアマチュア時代の作品38点をプリントでご覧いただけます。興浜南線、日中線、天北線、木原線、赤谷線、栗原電鉄、南部縦貫鉄道、高千穂線、鹿児島交通などなど、懐かしい鉄道風景をお楽しみください!
期間
2020年6月6日〜7月中旬ごろ
営業時間
13時〜18時(定休日:火・水)
"もう" - Google ニュース
June 10, 2020 at 04:00AM
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中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」:梅雨を楽しもう! - デジカメ Watch
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