主要なスマートフォンメーカーが次々と5G対応スマートフォンを投入する中、唯一5G対応が進んでいないAppleの「iPhone」。その理由はモデムチップと、それを開発するメーカーとの関係が大きく影響しているのだが、5G対応iPhoneが登場するのはいつになるのだろうか。
Appleの出遅れが目立つ5G対応スマホ
国内でも5Gの商用サービスが始まったことから、スマートフォンメーカー各社の5Gスマートフォンが次々と発売されている。
5Gの商用サービスは海外で先行して展開していることから、主要な海外メーカー大手は既に幾つかの5Gスマートフォンを投入。国内でも既にサムスン電子が「Galaxy S20」、Huaweiが「HUAWEI Mate30 Pro 5G」を提供している他、日本に進出して日が浅いOPPOやXiaomiが、KDDI(au)やソフトバンクの5Gスマートフォンラインアップに顔をそろえるなど、5Gを機として国内での足掛かりを強化しようとしている様子がうかがえる。
そして海外メーカーだけでなく、国内のメーカーも日本での商用サービス開始に照準を合わせて5Gスマートフォンの開発を進めてきたことから、各社が次々と5Gスマートフォンを投入してきているようだ。実際、シャープはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が商用サービスを開始するのに合わせて、5G対応スマートフォン「AQUOS R5G」をいち早く発売しているし、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia 1 II」も、KDDIから5月22日に発売された。
また富士通コネクテッドテクノロジーズもミリ波に対応した「arrows 5G」を開発、ドコモから6月下旬以降に発売される予定だ。これはQualcommの「Snapdragon 865 5G Modular Platform」を採用し、同社との協業によって開発したレファレンスデザインがベースとなっているとのこと。富士通からスピンアウトし規模縮小した同社が5Gスマートフォンをスピーディーに開発するため、新しい手法を取り入れたといえる。
だがそうした中にあって、大手メーカーの中で唯一、まだ5Gスマートフォンを発表していないのがAppleだ。Appleのお膝元である米国では2019年に5Gの商用サービスが始まっているが、同年に発売された「iPhone 11」シリーズは5Gに非対応であったし、最新機種となる「iPhone SE」の第2世代モデルも、コストパフォーマンス重視のモデルということもあってか5Gには対応していない。
モデムチップの5G対応が重要なポイントに
Appleだけが5Gスマートフォンを投入できていない要因は「モデムチップ」を巡る動向にある。
モデムはアナログ信号とデジタル信号を変換するデバイスであり、コンピュータで通信する上で古くから用いられているもの。それをスマートフォンなど小型の端末に内蔵できるよう、チップ化したのがモデムチップである。それゆえモデムチップはスマートフォンで通信する上で欠かせないものとして、必ず搭載されている。中には省スペース化や省電力化などのため、モデムをプロセッサに内包してしまうケースも多い。
また傘下に半導体メーカーのHiSiliconを持ち、グループ内でモデムチップを開発・供給できる体制を持つHuaweiなど一部の企業を除くと、多くのスマートフォンメーカーはモデムチップを他の半導体メーカーから供給してもらうのが一般的だ。
そして多くのメーカーが採用しているのが、米Qualcomm製のモデムチップである。実際Qualcommは多くのスマートフォンメーカーに提供しており、2020年5月現在、国内で提供されているスマートフォンのほとんどは「X55」という同社の5G対応モデムチップと、それに対応するプロセッサ「Snapdragon 865」をセットで搭載することで、5Gによる通信を実現しているのだ。
ゆえに5Gで多くの実績を持つQualcommからモデムチップの供給を受ければ、Appleも5Gへの対応を容易に進められるのだが、Appleにはそうはいかない事情があった。それはAppleが、Qualcommと“最悪”ともいえる関係に陥っていたからだ。
5G対応のため“犬猿の仲”Qualcommと和解
そのきっかけは、Appleが2017年に、Qualcommが他社に自社技術を提供する際に不当なライセンス料を請求していると主張し、Qualcommを訴えたこと。その後、QualcommもAppleを訴えるなどして泥沼の訴訟合戦が続き、両社の関係は急速に悪化。AppleはiPhoneなどにQualcommとIntelのモデムチップを採用していたが、この一件以降、Intel製への移行を急速に進め、2018年の「iPhone XS」シリーズ以降はIntel製のモデムチップを採用するようになっていた。
だがそのIntelが、5Gのモデムチップ開発を思うように進めることができず、供給スケジュールに大きな後れが生じてしまったのである。それゆえIntelからのモデムチップの供給を受けていたAppleも、5Gスマートフォンを思うように提供できなくなってしまったのだ。
このままIntelの5Gモデムチップの完成を待っていては、いつ5G対応のiPhoneを投入できるか分からず、それが理由となって競争力を失い、ライバル他社にiPhoneのシェアを大きく奪われてしまえば、経営を大きく揺るがす事態にもなりかねない。そうしたことからAppleは2019年4月に、最悪の関係に陥っていたQualcommと和解。既に5Gモデムチップで実績のある同社からモデムチップを供給してもらうという道を選んだわけだ。
一方で、この一件によってAppleは、スマートフォン開発におけるモデムチップの重要性を強く認識したといえる。そこでAppleは、Qualcommとの和解により最大の顧客であるAppleを失い、5Gモデムチップ開発から撤退を表明したIntelから、モデム事業の大半を買収。自ら5Gモデムチップを開発するに至っている。
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2020年に5G対応iPhoneは登場するのか
そうした経緯からまだ5Gに対応していないと考えられるiPhoneなのだが、では一体いつ5G対応iPhoneが登場するのかと考えた場合、やはり2020年のフラグシップモデルでの対応が有力なのではないだろうか。
理由は、他の主要メーカーがほぼ5Gスマートフォンを投入しているためだ。2020年は日本以外にも、フランスやカナダ、台湾など幾つかの国と地域で5Gの商用サービスが開始、あるいは開始が予定されており、先行する国々も含めれば、Appleが得意とする主要な先進国は、ほぼ何らかの形で5Gのサービスが始まることとなる。
それだけに、これ以上5Gへの対応が遅れれば、iPhoneのシェア低下につながってくる恐れがある。犬猿の仲だったQualcommと和解するという大きな判断を下したことを考えれば、やはり2020年には5G対応iPhoneが投入されるとみるのが自然だろう。
例年通りであればAppleは9月にiPhoneの新機種を投入していることから、5G対応iPhoneの発表もそのタイミングになると考えられる。ただ新型コロナウイルスの影響で製造業は小さからず大きな影響を受けているだけに、発表・発売のタイミングがずれ込む可能性は十分あり得る。
一方、Appleが自ら開発した5Gモデムチップを搭載したiPhoneが登場するのは、より先のこととなるだろう。Intelが開発に手間取ったことを考えれば、順調に開発が進んだとしてもiPhoneへの実装までには数年はかかると考えられるが、Appleが5Gモデムチップを自社開発できるようになれば、他社の動向に振り回されることもなくなるだけに、その開発動向は、スマートフォンの競争動向を見据える上でも、重要なポイントになるといえそうだ。
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June 08, 2020 at 08:00AM
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