新型コロナウィルスの感染拡大によって英国工場の稼働に影響が出て、シビックタイプRのマイナーチェンのジスケジュールが大幅に遅れていたが、ようやく10月9日から販売を開始した。
なかでも注目なのが日本限定200台のリミテッドエディションだ。標準モデルよりも約23㎏の軽量化を行い、走りに特化した専用装備の数々。
F1GP撤退で意気消沈したホンダファンに、これがホンダのスピリッツといわんばかりのタイプRが久々に登場したわけだ。
しかし190台はあっという間に売り切れ御免! シリアルナンバー1~10の10台はweb申し込みから2020年11月23日に抽選が行われ、当選者に商談権が与えられるという。
ちなみに、リミテッドエディションは11月30日から発売が開始される。
幸運なキミ、買えなかったあなた、全然興味ないオマエ。ちょっとこのレポート読んでみてくれ!!
文/松田秀士、写真/佐藤正勝
【画像ギャラリー】目に鮮やかな黄色のタイプR 日本でわずか200台のリミテッドエディションを手に入れられた人は幸せ者!!
鈴鹿サーキットのフルコースで試乗
初レースは1983年のスーパーシビックレース。筆者は鈴鹿育ちである。しかし、もう1年は鈴鹿を走っていない。が、目を瞑っていても走れるくらいに鈴鹿を熟知してる。
試乗は先導車の後ろにつき3台が隊列する。筆者は先導車の真後ろ。これがラッキーだったのだが、後続にはたいへん申し訳ないことをした。
1周は完熟走行だったが、筆者の車間が短かったことで(別に煽ったわけではない)先導車のペースがグングン上がり、ほぼ全開走行になったのだ。
このため後続との車間が大きく開いてしまった。別に自慢しているわけでは、ちょっとあるが、そんなつもりはない。それだけ鈴鹿サーキットは平均スピードも高くハードルが高いコースなのだ。
エンジンの冷却性能が向上
まず、下りメインストレートでは5速約230km/hを記録した。相変わらずK20C型直噴ターボエンジンのパンチはミドル級。シャープさとヘビーを持ち合わせた力感がある。
周回を重ねても熱ダレを感じないのはフロントグリル開口部を約13%広げ、ラジエーターのフィンピッチを3.0mm→2.5mmに縮小してフィン表面積を拡大したことでエンジン冷却性能を向上させているから。
エンジンそのものに変更はないのだが、ここ鈴鹿サーキットでは水温は通常108℃だったのが98℃と約10℃下げることができているとのこと。
空力バランスが目覚ましく向上
このような変更は空気抵抗が増しダウンフォースにも悪影響を与えてしまうのだが、フロントエアスポイラーの形状変更と剛性をアップしリブを追加するなどして空力バランスは向上させている。
それを証明するかのように1コーナーや130Rなど、高速コーナーの飛び込みへのステアリング応答が速くフロントタイヤが路面をしっかりとらえているのだ。
普通、高速コーナー進入では若干アンダーステアー気味にフロントが反応することで安心感をフィードバックするものだが、リミテッドエディションにはそれがない。
しかし恐怖心もないのはリアもしっかりしているから。いやどのコーナーでもしっかりしているわけではないから前後バランスが絶妙にとれているのだ。
これは空力バランスだけではない、サスペンションのリファインが大きく影響している。
サスペンションのリファインで意のままに!!
まずタイプR初採用となったBBS製の専用ホイール。鍛造アルミホイールはリム厚を2.6mmとして1輪あたり約2.5㎏、4本で約10㎏の軽量化。
リムはハブセンターから遠いので回転時のジャイロ効果が大きく、高速域でのハンドリングへの影響が大。バネ下は軽量化がモノを言うが、回転部分への影響は多大だ。
さらに前後サスペンションのブッシュ類の適正化。今回、サスペンションのバネレートやスタビライザーなどに変更はない。
しかし前後ブッシュを見直すことでコンプライアンスによる、フロントのバンプトーアウト、リアのバンプトーインをより明確に起こすようにしている。特にリアはバンプする直前の応力が入った瞬間にトーインを発生させている。
さらにこれに合わせてザックス製アダプティブ・ダンパーのプログラミングをリミテッドエディション専用セットとしている。
そしてタイヤはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を採用。もうこのタイヤ、Sタイヤぐらいグリップ高し。そりゃダンパーも合わせなきゃダメでしょ。
もうこれらによって、コーナーへのターンインが高速だろうがヘアピンだろうが面白いほどフロントが入ってゆく。
エイペックでのハーフアクセルでの速度維持も思いのまま。さすがにタイヤがタレてくると若干アンダー気味になってくる。
どんなタイプのドライバーでも楽しめる
ダンロップコーナーへのアプローチは3速ハーフスロットル。タイヤが元気なうちはすぐに全開で駆け上がったけれども、タレるとインに付けない。
ここまではどんなクルマでも同じだけれども、いったんアクセルをOFFにしないとどんどん膨らんでしまうもの。
しかしリミテッドエディションは一定のアンダーステアーを維持したままアクセルOFFにすることなく駆け上がってしまう。つまりアンダーコントロールがアクセルとステアリングで自在! 市販モデルでこれはかなり驚き。
久々にダンロップコーナーを走ってみて。以前S耐久で走ったときは実にスムーズな路面で走りやすかったけど、今回は適度に路面が波打ってきている。
昔、F3000で走っていた頃のダンロップコーナーはもの凄いアンギュレーションが路面にあって、クルマは飛び跳ね足のセットが決まらないと全開ではいけないものだった。
あの時ほどではないけれども、やっぱりダンロップコーナーってこうだよな、と口ずさみながらリミテッドエディションの挙動をチェック。
上下のバウンシングが1回で収束している。次々とうねる路面をしっかりと捉え、アクセル全開であっという間にエンジンリミッターが働きステアリングを切り込んだまま4速にシフトアップだ。忙しいがそれがまた楽しい。
ここでひとつ。フロントのグリップが上がったのでリアがついてこず、リアもグリップ向上のためのリファインを行ったとのこと。でもまだまだフロントのほうが勝ってますよ。
だから丁寧なステアリング操作がキモです。速く走るには。
しかーし、楽しみたいなら素早いステアリング操作でリアが流れます。電子制御が守ってくれるのでスピンはしません。だからどんなタイプのドライバーも楽しめるでしょう。
フローティング式ブレーキディスクを初採用
もうひとつ、フロントのブレンボーブレーキのディスクがドリルドではなくなりました。
見た目、エー! とがっかりするなかれ。これはスーパーカーやSGTなどレースマシンでは当たり前のディスクローターがフローティング式になったのだ。
ホンダでは2ピースブレーキディスクローターと呼んでいる。
これまでのハブと一体式のディスクローターではストレスがかかったときにローターが倒れ込むのでブレーキパッドとの隙間ができ、ブレーキを踏んでも実際に効き始めるまでの無効ストロークが大きくなってしまう。
しかし2ピース式はボビンというボルトで10カ所止めされていて、ハブと独立しているので常にブレーキパッドとの接触面がほぼ一定。
これによりブレーキ効率がよくなり2.54㎏の軽量化も。だからもうドリルドディスクは必要なくなったのだ。
確かに、1→2コーナー進入のコーナリングしながらのコントロールブレーキ。シケインへのフルブレーキング。とても安定して使いやすかった。
ま、気になるとすればシート。筆者にはちょっと大きく身体が動いた。
フルアルカンターラのステアリングと90gのカウンタウエイトで握りもよくなったシフトノブ。どう? リミテッドエディション欲しくなったかな?
でも、残念ながらもう買えないよ!
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November 19, 2020 at 07:00AM
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