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コロナ危機はまだ序章か(重見吉徳) - 日本経済新聞

写真はイメージ=PIXTA

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米国と中国は、貿易の不均衡などを巡って対立が続いており、長期化するとの見方も少なくないように思えます。政治面では対立する両国ですが、似通った点もあります。それは、足元の株式市場の主役が、個人投資家であるという点です。

米国では在宅中心の生活や給付金の支給をきっかけに、他方の中国では、金融市場の改革や国営メディアの一部報道などを手掛かりに、株式の取引そのものや、証券口座の開設が急増しています。取引急増で一部の証券会社のウェブサイトがダウンしたという報道も両国で共通し、2大大国の株式市場は過熱しているようです。

これらの家計にとってみると、雇用維持や給付金、失業給付の上乗せなどで所得水準がある程度維持されるものの、旅行や外食などのサービス消費ができない分、余資を資産運用(投資)に回すという計画かもしれません。

一方、企業の多くは売り上げが減る中、借り入れを急拡大させています。ただ、その主な使途は、給与などの経費支出のカバーや流動性の積み上げです。企業景況感や雇用などの指標に比べ、設備投資や研究開発(=資本の蓄積)は回復が鈍いようです。

政府は公共投資(=資本の蓄積)の執行が物理的に困難な中、家計や中小企業への補填で支出を拡大しています。企業や政府の資金調達は、中央銀行がバランスシートを拡大させることで、直接、間接に拠出しています。

家計や企業、中央銀行による行動の結果、金利は低く抑えられ、より多くのお金がこれまでと同じ量の生産資本を追いかけるため、金融資産の価格が上がります。貨幣の発行や、社債を含むマネタイゼーションは、モノのインフレは引き起こさずとも、資産のインフレとして現れているようです。特に米国では、一部の銘柄が引っ張る形で株価指数が上昇しており、主要な株式市場のバリュエーションは、歴史的に見れば、高水準です。

ここで過去のデータを頼りに、株式市場の期待リターンを考えてみましょう。図に示す通り、現在と同水準(22.7倍)の予想PERから5年間、米国株式に投資をしたときの平均的なリターン(配当込み)はほぼゼロ付近です。米国株式に現時点から中期的な期間、継続投資を行っても、実入りは少ないかもしれません。

仮に、今後5年間や10年間の株式市場全体の期待リターンがゼロだとすれば、個人投資家は悲嘆すべきでしょうか。必ずしもそうではありません。

例えば、10年先の株価水準が現在の水準と同じでも、その間に株価がしっかりと下がる場合には、積み立て投資により、投じた資金を上回る運用成果を得ることができます。言い換えれば、「株価がこれからUやVの文字を描けばよい」ということです。

これが反対の場合にはとても厄介です。例えば、株価がUやVを逆さまにしたように動くならば、個人投資家は途中で利益確定をしなければなりません。「タイミングを当てる」必要がありますが、簡単ではありませんし、長期投資の原則を崩してしまいます。

言い換えると、今は「上がってくれないと困る」状況ではなく、「下がってくれないと困る」状況です。

今後、株価は調整を見せるでしょうか。その可能性はあると思います。

歴史に鑑みれば、今後は「財政の崖」が生じ、必要なところに資金が向かわず、本格的な景気後退が生じて、株式市場が調整される可能性が考えられます。「今回は、異例に素早い対応で、リーマン危機の教訓に学んだ」と思われるかもしれませんが、実際には前回も初動は早かったのです。

2007~08年の世界金融危機に例えれば、現在はまだ、米大手証券会社のベア・スターンズや連邦住宅公社2社が公的な支援によって救済された段階かもしれません。当時は、その後、リーマン・ブラザーズの救済が見送られますが、その背景は、相次ぐ公的資金による救済やモラルハザードに国民が強い抵抗を示したためです。日本でも同様の理由から、97年の住専国会を経た後、大手の証券会社や都市銀行の救済が見送られ、破綻処理されました。

今のところは異例の規模の金融緩和や財政出動が実体経済を支えていますが、今後は、新たな業種への労働と資本のシフトが政策の中心になったり、財政緊縮派や富裕層などによる揺り戻しが生じたりする中、既存の雇用が支えきれなくなって、通常どおりの景気後退が訪れる可能性があるでしょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。

重見吉徳(しげみ・よしのり)
大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。農林中央金庫で外国債券やデリバティブの投資業務に従事。野村アセットマネジメントで債券の運用を経て、13年より現職。

[日経ヴェリタス2020年7月26日付]

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