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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド 急ピッチで広がるメンタルウエルネス - WWD JAPAN.com

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Entering the New Chapter for Mental Wellness

 ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載も第18回。“You’d Better Be Handsome”では、セレブ情報に敏感なレイチェル(Rachel)も加わって、ニューヨークのトレンドや新常識について毎回トーク。今回は、現在1210億ドル(約13兆2000億円)と言われているメンタルウエルネス市場について。コロナの影響でロックダウンが始まった昨年春から1年間の間に、アメリカでは6人に1人が新たにセラピー(心理カウンセリング)を始めたという統計も。90%以上の人々が、1つまたは2つ以上のうつ系の症状を持っていると言われている。

メイ:暗くて長〜い冬もようやく終わりそうな気配。この冬は特に長かったような。

スティービー:この1年間ずっと冬みたいなものだったから。冬ごもりする熊みたいな気分だったよ(笑)。

レイチェル:ニューヨークでは3月30日から新型コロナウィルスのワクチンを受けられる年齢制限が30歳まで下がったし、少し光が見え始めてきたかも。4月6日からは16歳以上は誰でも受けられるようになったし。

メイ:落ち込む暇もないくらい仕事が忙しかったのはありがたかったけど、友人と食事に行ったり旅行に行ったり、以前のような息抜きがうまくできなくなった。ときには「これってうつ?」という気分にもなったり。

スティービー:そういう人は多いんじゃないかな。やる気が出ないというか、体に力が入らないバーンアウトみたいな日も結構あった。以前だったら「次の旅行」とか「次の出張」を一つのゴールにして生活の張りを維持できていたんだけど。

レイチェル:うつや精神が不安定になっている人は周りでも増えているし、そういった心の問題について前よりもオープンにするようになってきたように感じる。このようなご時勢だし、メンタルが弱っても仕方ないというか、それを受け入れるムードが広がっているのかも。

メイ:雑誌や新聞でもメンタルイルネス(Mental Illness、精神疾患)とどう向き合うかだったり、メンタルウエルネスに効果的なグッズを紹介するような記事が目につく。また家にいる時間が長くなると嫌でも自分と向き合う時間も増える。

スティービー:これまで以上に、自分のメンタルウエルネスを維持し向上させることを意識している人が増えているよね。気をつけないと、知らぬ間に精神的に不安定になることもあり得る。普段から食事や運動に気を使って、大きな病気にならないように努力するのと一緒。強度のストレスや落ち込みから自分をうまく解放していかないと、心の健康はもちろん、体の健康にまで影響が出てくるってことだね。

リモートの進化で手軽に始められるセラピー

スティービー: 気が滅入ったからといって、突然セラピーに行くのはハードルが高い。そこに目をつけたシリコンバレー系のテックカンパニーが次々とメンタルヘルスビジネスに乗り出してきている。

メイ: 仕事から授業まで、この1年ですべてがリモート化されて、同時に前からあったはずのメンタルウエルネスアプリも一気に認知が高まった。

レイチェル:2020年はリモートが浸透してさまざまな事業やサービスのアプリ化が進んだ。「何もかもアプリってどうかな?」と思っていた分野でさえ、実際にアプリを使ってみると便利かも!とみんなが気づいたよね。これまでセラピーは前もってアポを入れて一対一で向き合うものが主流。アプリだと家から出なくていいしとても楽!前からメディテーションのアプリは充実していたけど、最近は心理学に基づいて症状を判断してくれ、そのときの気分はもちろん、睡眠、投薬、運動などを記録していけるようなアプリ「ムードフィット(MOODFIT)」なども人気みたい。

メイ:「ヘッドスペース(HEADSPACE)」 や「カーム(CALM)」などの瞑想アプリはテレビ広告まで打ち出し、ニーズが高いのだと感心した。私も何度かダウンロードしかけたけど、「瞑想するのにアプリって本当に必要?」ってやめてしまった。でも、シリコンバレーの人たちはみんな使ってそうな印象。

スティービー:「トークスペース(TALKSPACE)」はセラピストと直接やりとりができるという進化型アプリ。サブスクリプション型になっていて、会員になるとライブセッションに参加したり、テキストや動画、音声メッセージをいつでもセラピストに送信できるシステム。一対一のセッションは65ドル(約7000円)という設定で、いわゆる対面セラピーに比べるとかなりお得。

レイチェル:似たようなシステムだけど、 「ベターヘルプ(BETTER HELP)」も話題。1万人を超えるセラピストが登録していて、みんな資格はもちろん、最低3年・2000時間の実績が条件になっている。サービスの頻度などによって価格は変わるけど、週に35〜80ドル(約3800円~8700円)くらい。ニューヨークで実際に精神科医に診てもらうと1回200〜300ドル(2万1800〜3万2700円)はするだろうし。

スティービー:ミレニアル世代はネットやアプリでセラピストを探す人が多いから、こういったアプリは今後もっとニーズが高まるはず。にしても、この1年で新たにセラピーを始めた人が6人に1人いるってアメリカはメンタルウエルネスの先進国だね。

英国王室とメンタル問題

メイ:メンタルウエルネスといえば最近の話題は英国王室に嫁いで離脱したメーガン・マークル(Meghan Markle)。彼女はテレビ界の女王オプラ・ウィンフリー(Ophra Winfrey)のインタビューで、自身が精神的に追い込まれていた時に助けを求めても王室はセラピストを用意するなどはもってのほか、精神的な問題を抱えていることは黙らされていたと告白した。

スティービー:さらに、王室の中には2人の間に生まれてくる子供の皮膚の色を懸念する人もいたということを明かした。ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter、黒人の命は大切)の時代にテレビで激白されると、王室も逃げ場がない。

メイ:英国王室は今回のことだけではなく、故ダイアナ妃のときもメンタル問題を見ないふりして責められているよね?確か。

スティービー:ダイアナ妃はチャールズ皇太子と婚約したすぐ後から過食症に悩まされていたことを、離婚した後1995年にBBCのテレビインタビューでも告白している。王室内では周知の事実だったにも関わらず、アンドリュー・モートン(Andrew Morton)の著書「ダイアナの真実」が1992年に出版されるまで、措置も取らず黙って見過ごしていた。

レイチェル:若いときに母親を亡くしたヘンリー王子も20代で精神的に病み、セラピストにかかっていると2017年に発表。そのときウィリアム王子が彼を支援してくれたらしい。実際ウィリアム王子は、セレブリティーらと共に英国のメンタルヘルスウイークをプロモーションしたり、メンタルの問題に理解があるようには見えるけど。彼らの親、そして祖父母の世代は考えが古そうだから。

メイ:だってクイーンの夫であるフィリップ 殿下は99歳だからね。

レイチェル:そのヘンリー王子は最近ハリウッドに引っ越し、ネットフリックス(NETFLIX)とスポティファイ(SPOTIFY)と契約して企業向けにライフコーチングを提供するベターアップ(BETTERUP)に参加したというニュースが。

メイ:ヒルトンとかNASAとかをクライアントに持つ、あのベターアップ?

スティービー:そう。ベターアップは年商17億ドル(約1853億円)の企業で、ヘンリー王子はスポークスマンのような役割みたいだよ。彼はプレスリリースで、「メンタルフィットネス(Mental Fitness)」と いう言葉を使っていたけど、“心の健康の重要性”の伝道師として第二の人生を歩くということかも。

レイチェル:ヘンリー王子は、メーガンとともに「アーチウェル(ARCHEWELL)」という非営利団体を去年の春に立ち上げていて、支援を必要とする人々のチャリティのサポートや、ソーシャルおよびパーソナルケア、メンタルサービスなどのコーディネートをしていくらしい。

うつ病に悩まされるセレブリティたち

スティービー:英国王室ほどではないにしろ、人目にいつもさらされるセレブリティにはメンタルの問題を抱えている人が多いのは事実。最近はみんな声を大にして自分の問題を公にしているよね。ソーシャルメディアというプラットフォームがあるからだと思うけど。

メイ:メンタルイルネスと言ってすぐ思い浮かぶのはカニエ・ウェスト(Kanye West)かな。双極性人格障害らしいけど、突然大統領選挙に出馬したり、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)ともとうとう離婚が決まってしまったしね。

レイチェル:ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)との結婚で落ち着いて見えるジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)もうつ病の治療を受けているらしい。元ガールフレンドのセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)もキャリアは順調に見えるけど、うつ病を抱えている。セレーナが最近始めたビューティブランド「レアビューティー(RARE BEAUTY)」の売り上げ一部を、同時に立ち上げたレアインパクトファンド(RARE IMPACT FUND)に寄付し、お金がなくてもセラピーが受けられるメンタルヘルスのサポートを支援している。

メイ:歌手のエルトン・ジョン(Elton John)も「若くて有名というのは本当に大変なプレッシャーなんだ」と語っているけれど、実際に若くて有名な人の多くは心を病んでいる。

レイチェル:シンガーのビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)は現在19歳だけど、18になったばかりのときにグラミー賞を一気に5つも獲得して大快挙を成し遂げた一方で、裏ではうつ病で大変だったみたい。他にもビヨンセ(Beyonce)、ケイティ・ペリー(Katy Perry)、レディー・ガガ(Lady Gaga)、そしてマライア・キャリー(Mariah Carey)もメンタルを病んだことがあると告白している。

スティービー:歌ったり踊ったりしてストレスを発散してそうだけど、やっぱり人に見られているって大変なプレッシャーだよね。最近はそれにソーシャルメディアまで加わって、24時間監視されている気分になるのかも。セレーナは自分のソーシャルメディアからしばらく離れていたらしいよ。それもメンタルウエルネスには重要な鍵かも。

メイ:意見を発信する立場にいるセレブリティがメンタルウエルネスの話をすることで、「自分もセラピーを受けてみようかな」とか、「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」、と分かるならば素晴らしい。私もとりあえず「トークスペース」と「ベターヘルプ」を使ってみようかと、今日二人と話して思ったよ。

ヘルプが必要なファッション業界

レイチェル: メンタルを病むファッションデザイナーも多いよね。

スティービー:アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)やケイト・スペード(Kate Spade)の自殺は記憶に新しい。いま振り返ると、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が酔っ払って、人種差別的なコメントをしてディオール(DIOR)のクリエイティブ・ディレクターを降ろされたけど、彼もあのときはメンタル的にかなり衰弱していたのだと思う。マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)もアルコールと薬物で何度か通称“リハブ”と呼ばれる更生施設に行っているし。

メイ:そういえば以前はよくケイト・モス(Kate Moss)がリハブに入っただの、そういう話が多かったけど、最近あまり聞かないね。

スティービー:ファッション業界は一見華やかに見えるかもしれないけど、デザイナーの仕事量とプレッシャーは半端じゃないし、常に新しい子たちが入ってくるモデル業界もシビア。業界別にみる自殺率は、ストレスが多いと言われる法律系と医療を抜いてファッション業界が7位らしい。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)がそういう衝撃のデータを発表している。

レイチェル:オリジナル性の高いもの、クリエイティブなものを生み続けるって大変だからね。天才たちもそれを休みなくアウトプットしないといけないとなると、どこか狂ってくるのかも。

メイ:もっといろいろなサポートシステムが必要よね。最近は健康的に見えないモデルを起用しない企業があったり、コンデナスト社も18歳以下のモデルは起用しない方針を掲げているし、ここ数年で変わってきたこともある。

スティービー:高級ブランドコングロマリットのLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)やケリング(KERING)も、ビジネスではライバルであるにも関わらず、モデルの健康を守るために、共同で基準を決めて取り組んでいるね。細すぎるモデルの起用を取りやめたり、22時から6時は労働を禁止したり。これまで当たり前のことがファッション業界では無視されがちだから。

メイ:モデルもフォトグラファーのポートフォリオ作りのために無償でサービスを提供したり、デザイナーもお金が払えないから物品をあげたり。駆け出しのときは仕方がないとしても、いつまでもきちんとサービスに対するフィーを払わないケースも多々見てきたし。まだまだ改善の余地あり、よね。

受講者300万人超え、幸せになるコツを科学的に立証する授業

スティービー:ようするに「幸せってなんだろう?」みたいなことをみんな常に考えていて、以前だったら本を読んだり、映画を観たり、教会に行ったりしていたけど、最近はみんなアプリに答えを求めているのかも?

メイ:アプリだけじゃなくて、リモートで爆発的な人気を呼んだエール大学の授業、「ウエルビーイングの科学(SCIENCE OF WELLBEING)」を知っている?有名大学のオンライン授業が受けられるコーセラ(COURSERA)上で無料で受けられるんだけど、なんと受講者数が300万人を超えたそう。しかも2020年3月だけで63万人が申し込んだのだとか。

レイチェル:私もそれ受けた。イェール大学で元々人気があったクラスがオンライン化されて、世界中から受講者が増えたという。心理学科のローリー・サントス(Laurie Santos)教授が18年にスタートした授業で、イェール大学史上最も人気のクラスになり、その後オンライン化されてさらに人気に火がついた。

メイ:通称「ハピネス・コース」ね。実際どういう内容なの?

レイチェル:例えばお金がたくさんあるとか、高級車に乗ってるとか、完璧な体型とか、一般的な思い込みでは実はハッピーになれないというところから始まる。このコースは科学とリサーチに基づいているから説得力もある。

スティービー:確かに欲しいものは全て持っていて、家を何軒も持っている人が必ずしも幸せとは限らないよね。それを大学生の時点で学べたらラッキーかもね。

レイチェル:すぐに取り入れられるようなトリックや考え方も教えてくれる。「モノよりも経験を大事に」、「たくさんのお金よりたくさんの時間を大切に」、「人に親切にすることで自分が幸せになれる」などね。そこでも瞑想、運動、快眠はやはり大事と言っていた。

日々進化するメンタルウエルネスグッズ

スティービー:実はこのメンタルウエルネス市場規模は、世界で1210億ドル(約13兆2000億円)を超えているらしい。内訳は、香りや睡眠関係グッズが495億ドル(約5兆4000億円)、脳を活性化するサプリ系が348億ドル(約3兆8000億円)、自己啓発系が336億ドル(約3兆7000億円)、瞑想とマインドフルネスが29億ドル(3200億円)なんだとか。

メイ:言われてみれば、私も快眠を目指して新しい枕やシーツ、ルームフレグランス、サプリとか日々いろいろ試している。さらに心が落ち着くようにと、毎朝「ザ ヌー コー(THE NUE CO)」の“ムード(MOOD)”というサプリを欠かさないし。

レイチェル:それってもしかしてアシュワガンダが入っている?うつにも効くと言われている?

メイ:そうそう。古くからアーユルヴェーダで使われてきたインドの“薬用植物界の女王”と言われるアシュワガンダと、ビタミンBとD。ストレスを減らしてくれるらしい。効いているかと聞かれたら自信がないんだけど、もしこれを飲んでないでストレスが2倍になったらと想像するだけでストレスになる。

スティービー:リラックスが大事だというならば、カンナビジオール(CBD)はどう?最近CBDが入ったありとあらゆるグッズが充実してきている。

レイチェル:最近は専門店もよく見かける。不安、不眠、体の痛みだけでなく、ときには中毒にも効果的らしい。私の友人は、犬が吠えてうるさいときにもCBD入りのおやつをあげているくらい。

メイ:あっという間に製品が増えていて、吸うタイプやドロップタイプから、スキンケアライン、入浴剤、インティメシーオイルまであるし。

スティービー:食べられるものもあるよね。寝る前に食べるCBD入りのグミやチョコレートとかまで。

レイチェル:そういうのは分かるけど、不思議なトレンドもあるよね。本来は仏前で手を合わせるときに使う“鈴(りん)”をヨガする前か、瞑想のときなどに使っている人も多いようで。本来の役割である邪念を祓う、ところまで理解しているとは思えないから、あの音が気持ちを落ち着かせてくれるってことかと思うけど。

スティービー:もちろんグウィネス・パルトロー(Gwyneth Paltrow)のグープ(GOOP)でも売っていた。彼女はトレンドを読むのが早いからね。ハッピーになるには、お金も時間もかかるってことなのか。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

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