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【書評】『高地文明 「もう一つの四大文明」の発見』山本紀夫著 歴史の先入観を覆す洞察 - 産経ニュース

『高地文明』山本紀夫著(中公新書・1155円)
『高地文明』山本紀夫著(中公新書・1155円)

高地文明とは、文字通り標高の高い土地で発展した文明のこと。本書では「もう一つの四大文明」と銘打って、アンデス・メキシコ・チベット・エチオピアの高地文明を紹介している。

もう一つのということは、前提となる四大文明があるわけで、それはもちろん誰もが知る、エジプト・メソポタミア・インダス・黄河の四大文明だ。

しかし、従来の四大文明には、ユカタン半島一帯で生まれたマヤなどが含まれておらず、何をもって四大としたのか根拠がはっきりしない。

本書によれば四大文明という言葉は、昭和26(1951)年に初めて日本の教科書に登場したが、欧米などでは1968年時点でマヤやインカなども取り上げているそうで、どうやら今も四大文明という言葉を使っているのは日本だけのようだ。ではいくつなのか、と考えだすと、文明の定義に関わる大きな話になってくるわけだが、一つ確かに言えるのは、われわれの頭の中に、文明は大河の流域で発展するものという思い込みがあることだ。

本書はその先入観を鮮やかに覆してくれる。取り上げた4つの地域は、主に熱帯地方の標高2千メートルを超える高地で、大河がなくても古くから独自の農耕文化、牧畜文化が育まれ、都市が誕生し、宗教が発達していた。著者は地域ごとにその栽培植物に注目し、メキシコではトウモロコシや豆やカボチャ、アンデスのジャガイモ、チベットのオオムギとソバ、エチオピアのテフとエンセーテなどが、いかに大きな役割を果たしたか詳述、それにより大河がない場所でも多くの人口を支えられることを明らかにしていく。

そもそも高地は疫病をもたらす蚊が少なく、深い渓谷や湧き水は天然の上下水道にもなるうえ、峻険(しゅんけん)な地形は外敵の侵入を防いでくれるなど、実は人間にとって住みやすいところだと著者はいう。

なるほどと納得したが、本書で一番驚いたのは、秘境のイメージが強いチベットや、今も内戦が続くエチオピアが、いわゆる四大文明に比肩しうる高度な文明社会だったと洞察している点だ。頭の中の歴史地図がアップデートされる快感を味わった。(中公新書・1155円)

評・宮田珠己(エッセイスト)

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