いよいよ新学期。新しい学びに出合う季節にぴったりの本を紹介します。
皆 さんはマララ・ユスフザイと聞いて、何を思い 浮 かべますか? タリバンに 撃 たれ、 重傷 を負ったものの 奇跡 の 復活 を 遂 げた少女。史上最年少の17歳でノーベル平和 賞 を 受賞 した活動家。そのようなイメージを 抱 く人が多いと思います。
『わたしはマララ』(学研) は、タリバンによるテロリズムで生活が 一変 したマララさんの物語を記した手記です。パキスタン北部にある 故郷 の美しい 自然 や、 祖国 の 建国 の 歴史 、タリバンの 支配下 に 暮 らす人々の生活、そして15歳のとき下校 途中 に起きた 銃撃事件 についてなど、マララさんを 取 り 巻 く 環境 が等身大の姿で、かつ 鮮 やかに 描 かれています。
マララさんは 現在 23歳。 女性人権 活動家として、教育の大切さを世界に 訴 えています。けれどそれ 以前 に、 友達 や弟と 冗談 を言い合ったり、 喧嘩 をしたりする少女として生きてきた人であることも分かりました。
私 は、この本を読んで、今の社会には本当に多くの 課題 があること、そして命がけでそれらに立ち向かう人もいるのだと知りました。読むと 勇気 が 湧 いてくる、そんな 一冊 です。
学びたいという気持ちは世界 共通 。 『 戦場 カメラマン 渡部 陽一が見た世界 1 学校』(くもん 出版 ) を読むとそんな言葉が 浮 かびます。この本は戦場カメラマンの渡部陽一さんが世界中へ出向いた 経験 をもとに、 各地 の学校に通う子どもたちの 現状 を写真とともに、わかりやすく 伝 えています。
家が 貧 しいことや 自然災害 によって学校に通えないイラクやスリランカの子どもたち。 武装勢力 に学校を 攻撃 され、 荒 れた 校舎 のなかで 懸命 に学ぶアフガニスタンの子どもたち。なかには学校が武装勢力に 襲 われるため、 地域 の人の家で学ぶ子どもたちもいます。
写真にうつる子どもたちは、 支援団体 から 贈 られた新しい 制服 や教科書とともに明るい 笑顔 を浮かべています。 厳 しい 状況 におかれていても、全員、「学びたい」という気持ちが 満 ちあふれていて、地域の人々も教育を 支 えていこうと一体となっています。
現在 も世界では 戦争 が 絶 えず起こっています。けれど、今、 一生懸命 学ぶ子どもたちが大人になった時、世界の 未来 は明るいと 信 じています。
新学期にちなみ、さまざまな学びの形をご 紹介 します。
『 算法 少女』( 筑摩書房 ) 《1》の舞台は、200年 以上 前の 江戸 。13 歳 の 娘 あきは、町医者の父から算法(数学)を習っていました。当時の女の子は 踊 りや 三味線 などの 芸事 を習うのが 普通 でしたが、あきは問題を 解 くのが楽しく、勉強 熱心 でした。4月、 浅草 の 観音様 にお 参 りしたあきは、 奉納 された 算額 (算法の 問答 を書いた 絵馬 )に 間違 いがあるのを見つけ、それを書いた少年 侍 に 指摘 します。この出来事が 久留米藩主 ・ 有馬侯 に 伝 わり、あきを 姫君 の算法 御指南役 に、との話が……。
実際 に 刊行 された同名の和算書『算法少女』をめぐる 史実 をもとにした 歴史小説 です。やがて、あきは算法 塾 を開き、子どもに教えるようになりますが、和算が 庶民 に広まっていった様子などが、 達者 な 筆遣 いの 挿絵 とともに生き生きと 描 かれています。
アフリカのケニアには、ライオンや 象 などの野生動物が生息するサバンナで、住まいを 移動 させながら牛を 飼 うマサイという 遊牧民 がいます。 『ぼくはマサイ―ライオンの大地で育つ』(さ・え・ら書房) 《2》は、 伝統的 な 暮 らしの中で育った 著者 が 幼 い 頃 からの 体験 を語ります。6歳で学校に行きはじめ、 寄宿舎 生活にとまどったこと、休みになるたびに何十キロも歩いて家族の 居場所 を 探 したこと、サッカーの 試合 で 大統領 に出会い、 奨学 金を 得 てアメリカ 留学 をするとき 後押 ししてもらったこと……。 西欧 の世界で学びながらも 先祖伝来 の文化に 誇 りをもち、今では、遊牧民の 若者 が教育を受けられるように活動している著者の思いに 触 れてみてください。
『ギヴ・ミー・ア・チャンス 犬と少年の 再出発 』( 講談社 ) 《3》の題名Give me a chance(ぼくにチャンスを)とは、2014年に千葉県の 八街 少年院で 誕生 した 保護 犬の 訓練 プログラムのこと。 非行 をして少年院で教育を受けている少年が、 捨 てられた犬を訓練し、新しい 飼 い 主 へ送り出すという日本 初 の 試 みです。 過去 に 虐待 などを 受 け 怯 えている犬と 信頼関係 を 築 いていく約3か月の体験を通じて、少年たちが 責任 感や思いやりを学び、 自信 を取り 戻 していく 姿 に心動かされます。 印象的 な写真も多数入っています。
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