［スキャナー］都内の感染者数最多、「ピークまだ」病床逼迫の兆し : 医療・健康 : ニュース - 読売新聞

　緊急事態宣言の発令から２週間が経過した東京都内で２７日、新型コロナウイルスの新規感染者が２８４８人に上り、過去最多となった。ワクチン接種が進んだことで１月の第３波とは状況が異なり、重症化しやすい高齢患者は少なくなった。だが、若年層を中心に感染拡大に歯止めがかからず、病床逼迫（ひっぱく）の兆しが見えてきた。（医療部　野村昌玄、社会部　上野綾香）

　「コロナ用病床の８割が埋まり、ぎりぎりだ」

　東京臨海病院（江戸川区）は、２病棟を閉鎖して中等症患者用に５０床確保しているが、７月中旬以降は常に４０床前後が埋まる。半分以上が４０～５０歳代だ。「今年初めの第３波に比べ、高齢患者が少ないので、なんとか踏みとどまっているが、予断を許さない状況だ」と山口朋禎（ともよし）・呼吸器内科部長は警戒する。

　山口部長によると、病院がある江戸川区内では入院待機患者が増えているという。若い世代を中心に感染者が増えたため入院調整が遅れ、持病があり重症化しやすい患者でも自宅やホテルで療養を余儀なくされている。治療が遅れることで、入院した時には肺炎が悪化しているケースもあるという。区の担当者は「全ての年代がリスクを持っているという意識を改めて持ってほしい」と訴える。

　昭和大学病院（品川区）も、この１週間で入院患者が１・５倍に増え、相良博典病院長は「コロナ病床のさらなる増床を考えているが、一般診療を制限せざるを得なくなる」と語る。

　東京都内の新規感染者数は、６月下旬は５００人を下回る日も多かったが、７月１４日に１０００人台に達し、２７日には第３波のピークだった２５２０人を上回った。一方で、死者数は、１月下旬～２月上旬には２０～３０人台に上っていたものの、ここ１週間はゼロの日も多い。

　重症者の数も抑えられており、第３波のピーク時（１６０人）に比べると、２７日は約半分の８２人。重症者を年代別でみると、第３波は６０歳代以上が８割以上を占めていたのに対し、現在は４割程度になった。高齢者のワクチン接種が進んでいることが要因とみられ　る。だが、４０～５０歳代では重症化するケースが目立っており、現在のペースで感染が拡大し続ければ、重症者の数も増える恐れがある。

　病床が逼迫した場合に備えた動きも出ている。東京都は今月、入院待ちの患者を一時的に受け入れ、酸素投与などの治療を行う「入院待機ステーション」を平成立石病院内（葛飾区）に開設した。入院調整中に必要な治療が受けられず、急激な悪化により、在宅で死するようなケースを防ぐのが狙いだ。２０床を用意し、２３日から毎日新たに５人程度を受け入れ、現在は、翌日には入院先が決まる。

　ただ、感染はまだピークではないとの見方もある。東京大の仲田泰祐准教授（経済学）の研究チームは、感染者の急増で都民が外出を控えても、９月第１週に入院者数は７２００人に上り、都が確保する約６３００床を上回ると試算した。

　聖マリアンナ医科大学の国島広之教授（感染症学）は「感染力が強いインド型（デルタ型）の変異ウイルスへの置き換わりも急速に進んでおり、新規感染者はしばらく増え続けるだろう。ワクチン接種は重要だが、若い世代にすぐには進まない。まずは、自分たちの生命を守るために、基本的な感染対策を徹底してほしい」と指摘する。

　新型コロナウイルスに感染しても、若い世代は軽症で済むと安易に思いがちだ。しかし、軽症といっても、高熱や脱水などで点滴が必要なほど深刻な例も含まれ、油断は禁物だ。

　厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」によると、患者は「軽症」「中等症Ｉ」「中等症２」「重症」に分けられる。

　軽症は、肺炎がないため風邪程度の症状だと考える人もいる。だが、そうとは限らない。

　たとえば、３９度台の高熱や強い倦怠（けんたい）感が続いても、呼吸困難に陥っていなければ軽症と診断される。最初は軽症でも急速に病状が悪化することもあり、糖尿病や高血圧、肥満といった重症化リスクが高い人は注意が必要だ。

　回復しても、味覚障害や倦怠感が続くような後遺症が残るケースもある。

　中等症は、呼吸困難や肺炎がある「中等症Ｉ」と、肺炎が広がり酸素投与が必要な「中等症２」に分類される。

　この段階で適切な治療が受けられなければ、人工呼吸器が必要な重症になり、集中治療室（ＩＣＵ）で生死の境をさまよう危険性も高まる。回復しても、肺が損傷し、生涯にわたり医療用酸素の吸入が必要になる可能性もある。

　手引きの作成に関わった藤田次郎・琉球大教授（呼吸器内科）は「『重症』というのは、基本的に命にかかわる状態のことで、本人の自覚症状はあまり関係がない。軽症や中等症といっても、高熱や倦怠感などの強い自覚症状があることを理解してほしい」と話す。（医療部　辻田秀樹）

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