イヤな敗戦だ。結果もともかく先制を許した形がよくない。1回、いきなり糸原健斗が失策。その後、2死三塁になって先発・西勇輝が4番オースティンに被弾してしまう。前主将・糸原の失策は確かに痛い。しっかりしてくれと言いたいところだ。

それでも指揮官・矢野燿大が「エース」と位置づける投手ならこういうときこそ抑えるのも仕事だ。だが最大限に気を使わなければいけない男に1発を浴びる。6回にもオースティンに適時打を許した。

もちろん負けるときは負ける。全部勝てるはずはない。気になったのは矢野の心の中か。6回、DeNAは先発・浜口遥大にアクシデントがあったのか投手を代えてきた。こういう事態は流れが変わることも多い。5回まで2単打、1四球の3人しか塁に出ていなかった阪神打線だけに「ここはチャンス」と思った。

その6回は9番西勇からの攻撃。代打と思ったらそのまま打席に入るではないか。この時点でまだ76球。確かにまだいける。しかし、すでに6回3失点。ここは代打で攻めていくところでは、と思った。

「まだまだ余力はあったんで」。虎番記者の取材に矢野はそんな感じで答えたようだ。元々、西勇には長く投げさせたい意向もあるはず。だが、この日に限れば“記録”も影響したと想像する。西勇はこの試合に通算100勝がかかっていた。打線の奮起に期待し、西勇に白星を…と思ったかもしれない。

この見立てが当たっているとして、それ事態は批判されることではないと思う。なにしろ人間がやることだ。矢野はどちらかと言えば人情派の監督。西勇をなんとか勝たせたい…と考えても不思議ではない。

矢野が尊敬する闘将・星野仙一もそういうタイプだった。それまで貢献してくれた選手をときには不利と思える場面でも起用。「心中野球」と言われることもあった。「それがオレのいいとこかどうか…。分からんけどな」と苦笑したこともある。

それを分かった上で、あえて言いたい。この日に限ればそれは違ったのでは…ということだ。西勇にはまだチャンスはあるだろう。今は全力で勝利を追うことが大事だ。ヤクルトを下した巨人はここが正念場と3連勝を狙ってくるはず。チーム一丸になって全力でDeNAに向かっていかなければ足をすくわれる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)