フィル・ミケルソン(米国)が、50歳11カ月7日でメジャー最年長優勝を果たした。首位から出て5バーディー、6ボギーの73で回り、通算6アンダー、282で、ツアー通算45勝目、メジャー6勝目を飾った。50代でのメジャー制覇は史上初。1968年の全米プロ選手権を、48歳4カ月18日で制したジュリアス・ボロス(米国)の最年長記録を53年ぶりに更新した。松山英樹は72と伸ばせず23位。マスターズに続くメジャー連勝はならなかった。

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コロナ禍で疲弊しきった世界に、勇気をもたらす復活優勝だった。来月16日に51歳になるミケルソンは、15センチのウイニングパットを沈めると両手を掲げて喜びを爆発させた。同時に18番のグリーンを何重にも取り囲んだ、1日上限1万人の観衆も同じポーズで熱狂。90年代からタイガー・ウッズ(米国)と人気を二分してきたレフティーが、8年ぶりにメジャーを制した。

ミケルソン この勝利は本当に格別。まだメジャーに勝てると信じてきた。それが現実となった。こんなにうれしいことはない。50歳で勝てたことが、他の選手の励みになればと願う

出だしはつまずいた。1番パー4を3パットでボギー発進。1打差の2位から出てバーディー発進の同組ケプカに、あっという間に逆転された。だが2番パー5で第3打を50センチに寄せてバウンスバック。このホールでダブルボギーのケプカを再逆転した。5番で砂地からチップインバーディーを奪うと、勢いは加速。メジャー史上最長7876ヤードと、パワーと体力が必要な難コースで、50歳は終盤16番で、366ヤードの驚異的なティーショットを見せた。

50歳で出場資格を得たシニアツアーも勝ったが「若い選手と同じように飛ばせる間はやめない」と、主戦場はレギュラーツアーだ。近年は成績が下降し、27年以上守った世界ランキング100位以内からも今年漏れた。それでも食事制限とトレーニングで8キロ絞り、ドライバー平均飛距離はツアー48位の302・5ヤードと5年前より9ヤード伸びた。

18番では、なだれ込んだ観衆にもみくちゃにされながらグリーンに向かった。何度もはい上がってきた英雄に、少しでも近づきたい現代の市民の思いが行動に表れた。その英雄は「たくさんのサポートがないと、ここにはいられなかった。心から感謝したい」と言った。勝っておごらず、再び次の勝利へと歩き始めた。

◆フィル・ミケルソン 1970年6月16日、米カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。1歳半でボールを打ち始める。ゴルフ以外は右利きだが、鏡を見るように右利きの父をまねて左打ちに。アリゾナ州立大時代の90年に全米アマチュア選手権優勝、91年に米ツアーのノーザンテレコムオープン優勝。92年プロ転向。プロ初優勝は93年ビュイック招待。メジャーは出場47戦目となった04年マスターズで初制覇。その後、05年全米プロ、06、10年マスターズ、13年全英オープン、今大会とメジャー6勝。メジャーで唯一勝っていない全米オープンも、最多の2位6度。11年世界ゴルフ殿堂入り。米ツアー45勝は歴代8位。191センチ、91キロ。

◆メジャー最年長優勝 今大会前までは、1968年の全米プロ選手権を制したジュリアス・ボロス(米国)の48歳4カ月18日が、メジャーでの最年長優勝だった。これを、50歳11カ月7日のミケルソンが53年ぶりに更新。メジャー以外も含めた、米ツアーでの50歳以上の優勝は8人目。