1980年代や1990年代のネオクラシック系国産スポーツカーは、「買っときゃよかった」というレベルを通り越し、呆然とするほかない相場状況になっている。
具体的には、BNR34日産スカイラインGT-Rの低走行物件は1800万円オーバーが当たり前であり、そこまでいかずとも、FDこと最終型マツダRX-7も低走行な中古車は800万円以上となるのが最近の相場。
普通に考えて、そう簡単に出せる金額ではない。というか、出せない! そういったネオクラシック系各車の相場高騰は、輸入車においても基本的には同様だ。しかし、まだ高騰していないクルマもあるはず。
ということで、今回は輸入中古車のなかから、「今からでも間に合う高騰前のおススメ輸入車TOP5」を中古車事情に詳しい伊達軍曹が指南する。
文/伊達軍曹
写真/ポルシェ プジョー BMW MINI VW メルセデスベンツ
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高騰する前にゲットせよ!
空冷エンジン時代のポルシェ911はティプトロニックATの素の964カレラでも800万円以上が中心で、低走行なMT車となれば1000万円は軽く超える。
空冷911も10年前に買っておけば300万円か400万円ぐらいで済んだのに……、なんて嘆いていても意味はなく、泣いても笑っても時を戻すことはできない。我々はいつだって前を向き、来るべき未来を見据えなければならないのだ。
つまり、「そのうち高騰するかもしれないが、今のところはまだ高騰していないモデル」に、我々は注目しなければならないのである。
だが、そんな都合のいい輸入車はあるのだろうか? というか、主要どころは軒並み高騰済みのなか、まだ残っているのだろうか?
結論から申し上げれば、ある!
しかし、人間というのは誰もがだいたい同じようなことを考えるので、明らかに激しく高騰しそうなモデルは、すでに激しく高騰してしまっている。
残っているのは将来の値上がり幅は地味目で、現在の空冷ポルシェ911やBNR34GT-Rほどのウルトラ高騰はしないだろう。
だが多少なりとも値上がりするか、もしくは、しばらく乗った後でもトントンぐらいで売却できそうなクルマに乗るというのは、なかなか気分が良いものだ。そういった意味で「プチ高騰」が予想される輸入車5モデルを紹介しよう。
プジョー106:40万~120万円
まずはフランスの「プジョー106」。日本では1995年から2003年まで販売された、当時のプジョーのもっともベーシックなコンパクトハッチバックである。
本国ではさまざまなバリエーションが存在したプジョー106だが、日本には3ドアの上級グレードのみが正規輸入され、まずは「XSi」という1.6L、SOHC搭載車が上陸。ちなみに左ハンドル+5速MTのみという硬派な設定であった。
1996年9月にはマイナーチェンジに伴ってXSiが廃番となり、同じ1.6LだがDOHCとなった「S16」が登場。これも左ハンドル+5MTのみで、2002年12月に「S16リミテッド」に変更されたうえで2003年6月まで販売された。
このプジョー106というクルマは、いってみれば何の変哲もない小ぶりな3ドアハッチバック。電子制御の「での字」もない感じのクルマなのだが、とにかく気持ちよく走れるということで、(日本のごく一部で)かなりの人気を誇っているのだ。
そういった「素うどんみたいなクルマ」は今後もう二度と新車としては出てこないということで、プジョー106の相場も高騰してもおかしくないのだが、実際はそれほどでもない。
いや、10年ほど前までは二束三文(?)で買えることも多かったクルマなので、そう考えればすでに高騰しているともいえる。
具体的には、底値は40万円前後だが、コンディション良好な低走行物件(といっても6万~9万kmぐらい)は80万~120万円ぐらいとなっている場合が多い。
しかしこの相場も、「素うどんCAR」が順調に絶滅していく今後は、じわりじわりと上昇していくはず。
売却益が出るほど値上がりすることは(たぶん)ないと思うが、丁寧に乗っていけば、数年後もそれなり以上の値段で買い手が付くだろう。
現行型MINIのMT:150万円前後
お次は「MTの現行型MINI」だ。BMWジャパンは2020年2月、それまでは3ドアのミニには残していたMTを廃止し、7速DCT/8速AT/6速ATとした。
近年のミニユーザーは、往年の英国製MINI愛好家たちと違って「走りよりファッション性重視」の人が多いため、MTの廃止がたちまち相場高騰につながるとは考えにくい。
だがそんな現代版のMINIであっても、やはり「MTで乗りたい人」というのは常に一定数存在する。
そしてMTの現行型MINIの流通量はさほど多いわけでもない(全体の約6%でしかない)。そのため「最後のMTのMINI」の相場は今後、AT車とはやや異なる曲線を描くはず。
現在、車両150万円前後(2014~2016年式)で探せるまあまあ低走行な6速MTのMINIを入手し、「乗るのは休日ぐらい」のイメージでさほど距離を延ばさずに維持すれば、意外な化け方をする可能性はあるだろう。
先代BMW1シリーズ:100万~330万円
「1シリーズとしては最後のFR車」となった先代のBMW1シリーズも、プチ高騰候補のひとつだ。
BMWのなかではもっともコンパクトなモデルとして2004年に初代が誕生した1シリーズは、長きにわたってBMWならではのFRレイアウトを採用してきた。
FF車がほとんどとなる小型ハッチバックでFRを採用するのは偉業というか、さすがはBMW! であったのだ。
だが2019年8月に登場した現行型(3代目)ではあっけなくFFシャシーに変更し、ステアフィールにこだわるBMW愛好家各位を落胆させた。
そこで目をつけたいのが、2011年10月から2019年7月まで販売された「最後のFRとなる1シリーズ」の先代モデルだ。
といっても2011年から2015年途中までの前期型は、よくいえば「おもしろフェイス」で、ハッキリいってしまえばあまりカッコよくないので、FRとはいえ今後値上がりすることはないだろう。
しかしシャープで男前なスタイリングに一新された2015年5月以降の後期型であれば話は別だ。
後期型118i Mスポーツの比較的低走行な個体で、なおかつドライビングアシストパッケージが付いている禁煙車を、ミニの場合と同様に「乗るのは休日ぐらい」といったイメージでキレイに維持すれば数年後もFR車ならではのフィールを愛する誰かがけっこうな高値で買ってくれそうだ。
儲かるかどうかは知らないが(たぶん儲かりはしない)、「二束三文で手放す」みたいなことだけには絶対にならないはずだ。
VWルポGTI:40万~120万円
高騰してもおかしくないのに、なぜかさほど高騰しないまま数年にわたって推移しているのが「VWルポGTI」。
ルポといえば、Aセグメント(ポロよりさらに小さい、ルノー トゥインゴぐらいの車格)の地味な小型ハッチバックだったわけだが、そこに最高出力125psの1.6L、直4DOHCエンジンと6速MTをぶち込んだのが、2003年5月発売のルポGTIだ。
ルポGTIはエンジンの高出力化だけでなくボディの軽量化も施されており、フロントエンジンフードとドア、フェンダー部分にアルミ素材を採用。ベースモデル比、ドア30%、エンジンフード40%の軽量化が図られている。
その走りは「痛快!」「軽快!」そのもの。いわゆるホットハッチを好む人であれば必ずやハマるタイプのクルマだ。
で、そういった軽快古典系ホットハッチはもう二度と新車としては出てこないはずであるため、そもそも希少なルポGTIの相場はもっと高騰してもおかしくないと思われる。
だが現在は、80万~120万円あたりのゾーンでかなり好条件な1台が探せてしまうのである。ちなみにGTIじゃないルポは10万円ほどからある。
まあこの値段も「15年以上前の小さな中古車」としては十分高いわけだが、そのクオリティから考えれば断然納得の範囲であり、そこそこ希少性が高いクルマゆえに「プチ高騰」あるいは「高騰」の可能性は高いといえるだろう。
先代C63AMG:190万~300万円
現在はメルセデスAMGもご多分に漏れずダウンサイジングターボにて強力なパワーとトルクを発生させているが、先代のC63AMGは6.2Lの自然吸気V8 DOHCで、しかもそれは、AMGに引き抜かれたDr.フリードリッヒ・アイヒラーが中心となって開発した、ほとんどレーシングスペックともいえる珠玉のM156ユニットである。
莫大な自動車税という負のオマケは付いてくるが、そこさえ気にしないのであれば(あるいは見てみぬふりができるのであれば)、これほど素晴らしいマシンはそうあるものではない。
猫も杓子も、そしてAMGもダウンサイジングターボとなった今、6.2LのM156ユニットを積む先代C63AMGの中古車相場は1000万円ぐらいになっているのかと思いきや、実際は「190万円ぐらいから」である。
まあ100万円台のC63はさすがにちょっとアレだったとしても、低走行禁煙車も300万円ぐらいから探せてしまうのが、現在の先代C63AMGの相場だ。
できることならこれのエディション507(最高出力507psの限定車)を買い、キレイな状態で数年維持すれば……、ダウンサイジングターボやEVでは飽き足らなくなったアラブの石油王とかが、1億円ぐらいで買いたいと申し出てくるかもしれない……というのはもちろん嘘だが、まずまずのリセール額となることはほぼ間違いないだろう。
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November 15, 2020 at 07:00AM
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